PowerShellとcmdの違いを比較して理解しよう【図解付き】
Windowsの「黒い画面」というと、多くの人が古くからの「コマンドプロンプト(cmd.exe)」を思い浮かべるかもしれません。しかし、これまでの記事で私たちが学んできたのは、青い背景が特徴的な、よりモダンで強力な「PowerShell」でした。この二つ、似ているようで実は全くの別物です。
「なぜ2種類もあるの?」「結局どっちを使えばいいの?」「cmdはもう古いの?」そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、そんな長年のライバル(?)であるPowerShellとコマンドプロンプトの違いを、具体的なタスクで比較しながら、初心者にも分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたがなぜPowerShellを選ぶべきなのか、その圧倒的なメリットをはっきりと理解できているはずです。コマンドプロンプトという「トンカチ」と、PowerShellという「電動多機能ツール」の違いを、その目で確かめてみましょう!
最大にして決定的な違い:「オブジェクト」対「テキスト」
PowerShellとcmdの最も根本的な違い、それはコマンドが返す情報の形式です。ここを理解することが、両者の違いを理解する鍵となります。
コマンドプロンプト(cmd)の世界観:すべては「テキスト」
コマンドプロンプトでdirのようなコマンドを打つと、画面に表示されるのは、人間が読むために整形されたただの「テキスト(文字列)」です。それはまるで、紙に印刷されたリストのようなものです。リストから「ファイル名だけ」や「更新日時だけ」を抜き出して、次の処理に利用するのは非常に面倒で、複雑な文字列処理が必要になります。
C:\> dir
ドライブ C のボリューム ラベルは Windows です
ボリューム シリアル番号は XXXX-XXXX です
C:\ のディレクトリ
2024/07/07 09:00 Program Files
2024/07/07 09:05 Users
2024/07/07 09:10 Windows
0 個のファイル 0 バイト
3 個のディレクトリ 123,456,789,012 バイトの空き領域
この出力結果は、ただの「文字の羅列」であり、プログラムにとっては構造を持たないデータです。
PowerShellの世界観:すべては「オブジェクト」
一方、PowerShellで似たようなコマンドGet-ChildItemを実行すると、返ってくるのは構造化された「オブジェクト」の集まりです。オブジェクトとは、様々な情報(プロパティ)を内包したデータの塊です。
【概念図】Get-ChildItemの返す「ファイルオブジェクト」の一つには、以下のような情報が整然と格納されています。
Name: "Program Files" (名前)Length: (サイズ)CreationTime: "2024/07/07 9:00:00" (作成日時)LastWriteTime: "2024/07/07 9:02:10" (最終更新日時)Mode: "d-----" (属性)
これはまるで、情報が整理されたExcelの表のようなものです。この構造のおかげで、PowerShellは「サイズが大きい順に並べて」とか「拡張子が.txtのものだけ表示して」といった、データに基づいた柔軟な処理が驚くほど簡単にできるのです。
PS C:\> Get-ChildItem
ディレクトリ: C:\
Mode LastWriteTime Length Name
---- ------------- ------ ----
d----- 2024/07/07 09:00 Program Files
d----- 2024/07/07 09:05 Users
d----- 2024/07/07 09:10 Windows
見た目は似ていますが、裏側で扱っているデータの質が全く違う、という点が最も重要です。
実践比較:特定のタスクで比べてみよう
「現在実行中のサービスの中から、名前に'Windows'と付くものだけを、名前順で表示したい」という、少し複雑なタスクで両者を比較してみましょう。
コマンドプロンプト(cmd)での挑戦
cmdでこれを実現しようとすると、非常に困難です。net startでサービス一覧は取得できますが、結果はただのテキストです。ここから特定の文字を含む行を抜き出し、さらにそれを並べ替えるには、findstrやsort、そして複雑なforループを駆使する必要があり、初心者にはほぼ不可能です。
C:\> net start
次の Windows サービスが開始されています:
Application Host Helper Service
Background Tasks Infrastructure Service
Base Filtering Engine
...
Windows Audio
Windows Connection Manager
Windows Defender Antivirus Service
...
このテキストの壁から、欲しい情報だけを正確に抜き出すのは至難の業です。
PowerShellでの華麗な解決策
PowerShellなら、オブジェクトとパイプラインのおかげで、この処理をたった一行で、直感的に書くことができます。
Get-Service | Where-Object { $_.DisplayName -like "*Windows*" } | Sort-Object -Property DisplayName
この一行は、以下のような処理を順番に行っています。
Get-Service: 全てのサービスを「オブジェクト」として取得する。|: 取得したオブジェクト群を、次のコマンドへ渡す。Where-Object ...: 渡されたオブジェクトの中から、表示名(DisplayNameプロパティ)に "Windows" を含むものだけを絞り込む。|: 絞り込んだ結果を、さらに次のコマンドへ渡す。Sort-Object ...: 渡されたオブジェクトを、表示名(DisplayNameプロパティ)で並べ替える。
この比較で、PowerShellがいかにデータ処理に優れているか、そのメリットを実感いただけたのではないでしょうか。
コマンドや文法の違い
PowerShellは、cmdとの互換性のため、いくつかの古いコマンドを「エイリアス(別名)」として使うことができます。しかし、本来のコマンドレットや文法は、より現代的で一貫性のある設計になっています。
変数の扱い
cmd: set 変数名=値
set MYVAR=Hello World
PowerShell: $変数名 = 値
$myVar = "Hello World"
PowerShellでは変数名の前に$を付けるのがルールです。
条件分岐 (if文)
cmd:
if "%MYVAR%"=="Hello World" (echo Same)
PowerShell:
if ($myVar -eq "Hello World") { Write-Host "Same" }
PowerShellでは-eq (equal) や -gt (greater than) といった、より分かりやすい比較演算子が使われます。
cmdはもう不要?Windowsシェルの未来
「PowerShellがこんなに便利なら、コマンドプロンプトはもういらないの?」という疑問が浮かびますよね。答えは「いいえ、すぐにはなくなりません。しかし、新しいことは全てPowerShellで行うべきです」となります。
コマンドプロンプトは、非常に古いシステムや、過去に作られた膨大な数のバッチファイル(.bat)との互換性を保つために、今もWindowsに搭載されています。Microsoftがこれを完全に廃止する可能性は低いでしょう。
しかし、Windowsの標準ターミナルツールである「Windows Terminal」のデフォルト設定がPowerShellになっていることからも分かる通り、Microsoftが今後のWindows管理と自動化の中心として位置付けているのは、間違いなくPowerShellです。
これから新しくコマンドラインを学ぶなら、迷わずPowerShellを選ぶのが賢明な選択と言えるでしょう。
まとめ
今回は、PowerShellとコマンドプロンプト(cmd)の決定的な違いについて、図解(のイメージ)を交えながら比較しました。
- 最大の違いは、テキストを扱うcmdと、オブジェクトを扱うPowerShellという根本的な設計思想。
- PowerShellは、パイプラインでオブジェクトを繋ぐことで、柔軟で強力なデータ処理が可能。
- コマンドの命名規則(
動詞-名詞)や文法も、PowerShellの方が一貫性があり、現代的。 - cmdがすぐになくなることはないが、今後のWindowsではPowerShellが主役。
これで、あなたがWindowsの黒い画面と向き合うとき、なぜPowerShellという「多機能ツール」を選ぶべきなのか、その理由が明確になったはずです。PowerShell入門シリーズは今回で一区切りとなりますが、あなたの自動化への旅はまだ始まったばかりです。ぜひ、日々の作業にPowerShellを取り入れて、その力を実感してみてください!