【Windowsでも使える】BashをWSLでインストールする手順(画像付き)
前回の記事「Bashとは?Linux初心者でもわかるシェルの基本と魅力」では、黒い画面の正体であるBashの基本的な使い方とそのパワフルな機能について学びました。しかし、Webクリエイターの中には「自分のメインマシンはWindowsだから、Bashは関係ないかな…」と思った方もいるかもしれません。ご安心ください!今のWindowsは、かつてないほどLinuxとの連携が強力になっています。
その鍵となるのが、今回ご紹介するWSL (Windows Subsystem for Linux)です。WSLを使えば、Windowsの上で「本物の」Linux環境を驚くほど簡単に動かすことができ、もちろんBashも自由に使えるようになります。これにより、Webサーバー(多くはLinuxベース)と同じ環境で開発やテストを行えるため、作業効率と正確性が飛躍的に向上します。
この記事では、初心者の方でも迷わないように、WSLをインストールしてWindows上でBash環境を構築する手順を、スクリーンショットの代わりとなるような丁寧な説明付きで解説します。コピペで実行できるコマンドだけで設定が完了するので、ぜひ一緒に「Windowsで動くBash」を体験してみましょう!
WSL (Windows Subsystem for Linux) とは?
WSLをインストールする前に、まずはこれが一体何者なのかを簡単に理解しておきましょう。
WSLとは、一言でいうと「Windows上でLinuxのプログラムを直接実行するための仕組み」です。Microsoftが公式に開発している機能で、Windowsの中にLinux専用の家を建てるようなイメージです。
昔は、WindowsでLinux環境を動かすには「仮想マシン(Virtual Machine)」という、PCの中にまるごと別のPCを再現するような重たいソフトウェアを使うのが一般的でした。しかし、WSLは仮想マシンよりも遥かに軽量で、起動も一瞬です。Windowsのファイルシステムにも簡単にアクセスできるため、まるで元からWindowsに組み込まれていたかのように自然にLinuxコマンド(Bash)を使うことができます。
特に、現在の主流であるWSL 2は、内部で本物のLinuxカーネルを動かしているため、互換性が非常に高く、Web開発で使うほぼ全てのツールが快適に動作します。これから紹介する方法でインストールすれば、自動的にこのWSL 2がセットアップされるので安心してください。
ステップ1: WSLとLinux(Ubuntu)の超かんたんインストール
昔は手順が少し複雑でしたが、現在のWindows 10やWindows 11では、信じられないほど簡単にWSLをインストールできるようになりました。必要なのは、たった一つのコマンドだけです。
1-1. PowerShellを「管理者として」開く
まず、コマンドを実行するための「PowerShell」または「ターミナル」を管理者権限で開きます。
- Windowsのスタートボタンを右クリックします。
- メニューから「ターミナル (管理者)」または「Windows PowerShell (管理者)」を選択します。
- 「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」と表示されたら、「はい」をクリックします。
黒または青のウィンドウが表示されれば準備完了です。
1-2. インストールコマンドを実行する
開いた管理者権限のPowerShellに、以下のコマンドをコピー&ペーストしてEnterキーを押してください。
wsl --install
このたった一つのコマンドが、以下の必要な処理をすべて自動で行ってくれます。
- WSLと仮想マシン機能を有効化する。
- 最新のLinuxカーネルをダウンロード・インストールする。
- WSL 2をデフォルトとして設定する。
- Linuxディストリビューション(初期設定ではUbuntu)をダウンロード・インストールする。
処理が完了すると、コンピューターの再起動を求められます。指示に従ってWindowsを再起動してください。
ステップ2: Linux環境の初期設定
Windowsの再起動後、自動的にUbuntuのセットアップが始まる場合があります。始まらない場合は、スタートメニューから「Ubuntu」を探してクリックしてください。初回起動時に、Linux環境で使うユーザーアカウントのセットアップを行います。
2-1. Linux用のユーザー名とパスワードを作成する
ターミナルに「Enter new UNIX username:」と表示されたら、Linux環境で使うあなたのユーザー名を入力してEnterキーを押します(半角英数字推奨)。これはWindowsのユーザー名とは別のもので構いません。
次に「New password:」と表示されるので、パスワードを入力します。セキュリティのため、入力した文字は画面に表示されませんが、ちゃんと入力されています。入力が終わったらEnterキーを押し、確認のため「Retype new password:」でもう一度同じパスワードを入力してEnterキーを押します。
「Password: password updated successfully」と表示されれば、ユーザー作成は成功です。これで、あなた専用のLinux環境の準備が整いました。
2-2. パッケージを最新の状態に更新する
インストールしたばかりのLinuxは、内部のソフトウェアが少し古い場合があります。使い始める前に、以下のコマンドでパッケージを最新の状態に更新しておきましょう。これは新しいスマートフォンを買ったら、まずOSをアップデートするのと同じ感覚です。
まず、パッケージリストを更新します。
sudo apt update
途中でパスワードを求められたら、先ほど設定したLinux用のパスワードを入力してください。
次に、インストール済みのパッケージをアップグレードします。
sudo apt upgrade -y
これで、あなたのLinux環境は最新かつ安全な状態になりました。
ステップ3: Windows上でBashを使ってみよう!
お疲れ様でした!これですべての準備が完了しました。スタートメニューから「Ubuntu」を起動すれば、いつでもBashが使えます。前回の記事で学んだコマンドが、あなたのWindowsマシンでそのまま動くことを確認してみましょう。
Windowsのファイルにアクセスする
WSLの便利な点は、Linux環境からWindowsのファイルに簡単にアクセスできることです。Windowsの各ドライブは、`/mnt/`というディレクトリの下にマウント(接続)されています。例えば、Cドライブは`/mnt/c/`になります。
あなたのWindowsのユーザーフォルダを覗いてみましょう。(`YourWindowsUser`の部分は、ご自身のWindowsユーザー名に置き換えてください)
$ ls -l /mnt/c/Users/YourWindowsUser/Documents
Windowsの「ドキュメント」フォルダの中身が一覧表示されたはずです。このように、WSLはWindowsとシームレスに連携します。
WSL上でファイルを作成してみる
もちろん、Linux環境内(ホームディレクトリなど)でファイルを作成することもできます。前回の復習も兼ねて、簡単なファイルを作ってみましょう。
$ echo "Hello from Bash on WSL!" > wsl_test.txt
`cat`コマンドで中身を確認してみましょう。
$ cat wsl_test.txt
Hello from Bash on WSL!
完璧です!あなたは今、Windowsの上でBashを自在に操っています。
まとめ
今回は、WindowsユーザーがBash環境を手に入れるための最も現代的で強力な方法、WSLの導入手順を解説しました。たった一つのコマンドでインストールでき、起動すればそこはもうLinuxの世界。この手軽さとパワフルさを体感していただけたでしょうか。
WSLを使えば、これまでmacOSやLinuxユーザーの専売特許のように思えた多くのコマンドラインツールや開発手法を、愛用のWindowsマシンでそのまま実践できます。これにより、開発環境と本番サーバーの環境を近づけ、よりスムーズで質の高いWeb制作が可能になります。
「黒い画面は怖い」というイメージは、もう過去のものです。これからは、あなたの作業を効率化する頼もしい相棒として、ぜひBashを使いこなしていってください。
さて、WindowsでBashが使えるようになったところで、次はmacOSユーザー向けのお話です。最近のmacOSでは標準シェルがZshに変わりましたが、「やはりBashが使いたい!」という方のために、Bashへの切り替え方法や活用法を解説します。